企業の幹部候補生や5人~15人程度の部下を持つ係長、課長クラスに対しての教育プログラムの一つとして、
「コーチング」を取り入れる企業が増えてきました。
とはいえ、こういった、実働部隊に対する「コーチング」教育が目指すものは、
「コーチング型のコミュニケーション」を習得させることに特化される場合が少なくありません。
つまり、彼らが統括するチームを効率よく動かし、モチベーションを上げさせ、なおかつパフォーマンスを改善するために効果を発揮する「コーチング型コミュニケーション」のやり方を学ぶことに焦点を置いているのです。
そういったことも確かに「コーチング」のもつ効果の一つではありますが、
ここで述べる「エグゼクティブコーチング」は、「コーチング」を行う本来の意義のためのセッションを意味しています。
そもそもコーチングとは?
「コーチング」は、人のモチベーションを維持させて、その状態を管理するためのツールです。
とはいえ、コーチングを受けるクライアントに対してアドバイスをすることは殆どありません。
他者への強い影響を持つ専門職に従事する人や、企業のエグゼクティブたちが日々直面する問題を解決し、
より高次の目標を実現するために必要な柔軟な思考を持ち、的確で無駄のない行動がとれるように導いていくのです。
つまり、クライアントの主体性を侵さないことで、「クライアントが自分で考え、自分で答えを見つける」ように導くのです。
自発的に選んだ解決策でなければ目標を実現できない
あなたが世襲によって現在のエグゼクティブの地位を得た人でない限りは、
かつては上司に与えられた目標を達成するための戦略を計画し、問題解決のための対策を立てた経験があるはずです。
そしてその計画や対策が、実は上司のお気に入りのシナリオに基づいて作られたものであったり、
対策や計画はこんな風に作るものだというマニュアルや会社の慣習に即して作られたもだったりすると、
実際に実行に移しても今一つ効果を実感できなかったり、結局は計画のための計画にすぎないものであったりした経験があるはずです。
人は、どんなに立派な指導を受けても、自分の脳の部分で、心の奥深くで、「やりたい」と納得した「自発的な行動」が起こらなければ、与えられただけの目標を達成することなどできません。
よく、「やる気がある」とか「やる気がない」とかという言葉を、モチベーションという言葉を代わりに使って表現しつつ、「モチベーションを上げることで社員のパフォーマンスを上げる」と言い切る人がいますが、それは人間の表面だけを見た認識であって、実際に効果的な対策ではありません。
もともとはスポーツ界で使われていた「コーチング」は、ビジネスの世界でも人材育成の技術として用いられるようになり、
その人の潜在能力や問題の解決策を自主的に引き出し、その人のスキルと能力の開発を進める技術として発展してきました。
コーチングは相談をする相手であるコンサルタントとは全く別物です。
コーチングはあくまでも自主的行動を促すものですから、日本の社会構造と社会通念を考えれば、常に意思決定を行うことが求められ、その意思決定と行動が多くの人に影響を与える「企業のエグゼクティブ」や医師や弁護士などの「高度な専門職」のコーチングが最も注目されるべき技術でしょう。
高い位置にいることの不幸
子供の頃に読んだ「裸の王様」の物語にあるように、ある組織や社会の頂点、あるいは高い位置にいるということは、万の民が憧れることであると同時に、不幸で不便なことでもあります。
なぜなら、あなたがどんなに間違っていても、どんなに愚かであっても、誰もあなたにほんとうのことを教えてくれないことが多いからです。
そしてもう一つの不幸は、高みにいればいるほど、自分が抱える恐れる気持ちや焦りを、安易に誰彼に伝えることができないことでしょう。
リーダーや高度な専門職の人に対して、部下や社会が求めることは、「強く賢明で有能な人」であり続けてくれることです。そして、あなたもそれを望んでいるのです。
「エグゼクティブコーチング」はコンサルタントでもなく、あなたの相談相手でもありません。あくまでもあなたが持つ優秀さと、潜在能力と、知性と、賢明さと勇気を、ああたが自主的に自発的に引き出すように、あなたが望むゴールへと送り届ける「馬車」です。
エグゼクティブにこそ望ましい「コーチング」をあなたの自主的な選択肢として取り入れてみましょう。